2010年8月2日月曜日

制度活用への思い

―― 突然ですが、皆さん!「ムラタセイサク君」というロボットをご存知でしょうか?
そうです!今回取材させていただきましたのは、「ムラタセイサク君」の生みの親でいらっしゃいます、京都いや、日本を代表する電子部品メーカーの村田製作所様です。

創業当初から研究開発、ものづくりにこだわり、エレクトロニクスの進化とともに、現在もワールドワイドに活動を展開されています。

意欲のある方が出産・育児・介護といった家庭での努めを果たしつつ、キャリアアップができるようさまざまな制度を整え働く女性を支援される様になった経緯など、普段聞けないようなお話などもご紹介していきたいと思います。



今回は、環境部 環境推進課の細見桂子様
組織風土改革推進委員会 事務局の阿曽祐子様 に制度面についてお話いただきました。







■御社には 「ウェルカムバック制度」 という変わった制度を導入されていると思うのですが、詳しくお教え下さい。


この制度は、一旦当社を退職した者が、ムラタで働くことに再チャレンジできる制度のことです。

もちろん、手を上げた人全員が戻れるわけではなく、会社側のニーズがあることが条件になります。 

過去当社にいたということで、採用試験も少しハードルが低くなっていると思います。入社後の処遇
は以前のものを考慮されますし、すごくありがたい制度です。


■他に時間短縮勤務制度があると思いますが、どの様な制度ですか?


当社ではお子さんが小学校卒業するまで、養育する社員が取得できます。
一日120分まで短縮でき、人によって出勤時間を遅くしたり、退社時間を早くしたり、出勤、退社時間を一時間ずつなど、利用する社員の状況によって決めることができるのが特徴ですね。半日休暇という制度もありますし、社員は自由に取得しています。

また、当社の育児休暇は原則子どもが満一歳到達後の三月末までになり、長ければ産休と合わせて二年近く取得できるんです。マタニティー用
の制服ももちろんありますし、最近はマタニティーの方も非常に多いんですよ。

―― へぇー!!!すごいですね。個人によって利用時間が決めれたり、半日休暇はとても助かりますね。小学校卒業までなら子育てしながら働く意欲は出てきますしね。

■このような制度が確立された背景をお教えいただけますか?


そうですね、やはり当社で働くノウハウ持っていることは大きなメリットだと感じたのがきっかけだと思います。社内ルールや些細な決め事、物の配置など覚えなければならないことは多く、覚えるのに大抵一年はかかってしまいます。

しかし、経験者であれば、専門用語を話しても、ある程度の知識があるのですぐ理解できるんですよね。わかっているのは強みだと思いますし、活かすべきだと思います。

会社としても、当社が好きで戻ってきたい、結婚・出産してもやめたくないという人の思いをもっと活かせれば、社風も良くなると思います。

当社の労働組合が現場の声をヒアリング調査し実施していることも大きいと思います。原則は同じ職場、同じ部門に復職ですが、復帰される方にとってメリットがある様、職種は若干変わることもあります。

どちらにとっても働きやすい環境となるよう考えられています。そのために
最近人事も力を入れて、事前面談をアレンジしたりしていますし、復職前に職場の上司とどんな状況で、心配事はないかと面談する流れになっているんです。

―― そうなんですね!実際育児休暇から復帰すると、したい仕事が出来ない、勤務地を遠くにされたというお話をよく聞きますし、同じ所に戻れるのは良いですね。確かに、ゼロからとなると研修も必要で、費用も時間もかかってしまいますしメリットはたくさんありますね。そういう点も中小企業が取り組めれば女性活用するための問題を解決していけるかもしれませね。


■実際の利用状況をお教えいただけますか?

私が知っている限りでも職場に戻ってきている人は数人います。他の社員は知っていますし、制度を使っているということを他の社員も認識しています。
実際復職されるとなると、一緒に仕事したことがなくても、かつて当社にいた人だからどこか安心感があるんです。「お帰りなさい」といった感じで。この制度自体を好意的に受け止めている社員も多いと思いますよ。

―― すごいですね。なんだか暖かい感じがしますね。

■利用されている方は女性が多いのですか?男性はいらっしゃらないですか?

そうですね。ウェルカムバック制度も短時間勤務制度も知っている限りでは女性が多いです。ウェルカムバック制度については旦那さんの転勤とか、海外留学から戻って来られたり、という方がいらっしゃいます。
短時間縮勤務制度は、自分が養育するなど、取得条件が決まっているんですよね。ですから、現在はまだ女性ばかりです。
しかし、育児休業は、男性取得者も数名います。最近は男性の配偶者出産休暇(最長五日間)の利用者が多いようです。
最近でこそ男性の育児休暇取得者も増えましたが、出産・育児に関わりのない若い男性社員がワークライフバランスなどを理解しているかというとまだまだこれからです。 
例えば、短時間勤務の方と組み、「子どもが熱を出した」と早退することを理解できず、不満に感じ「またですか」と心無い一言を口にしてしまったという話も聞いたことがあります。
このような制度を女性だけのものではなく、すべての人が活用できるような物になり、皆が良いものとして捉えることができれば、利用者側が畏縮してしまう事も、周りが被害者意識をもってしまう事もないと思います。
利用者側が「こういう制度を皆も使うことになる」と声高に叫ぶことは難しいですから、人事から「こういう目的で実施している」とその旨を伝えることが大切だと思います。


取材を通して

―― 村田製作所様では、どの制度に関しても整っていて、実際に活用されていることに驚きました。今回の取材を通し、大手であることで制度が整うわけでもなく、活用しやすい風土も簡単に作り上げられたものではないと知りました。
私たちは大手だから制度が整っているのは当たり前だと思っていたのかもしれません。
企業にとって建前で制度を作ることも導入することも簡単だと思います。
しかし、村田製作所様では社員の方々が活用しやすいような制度を作るといったように、物事に対する姿勢がどれも本質的に行われており、考え方も違いました。
例えば、復職する方に対し、事前に人事の方が面談を行ったり、制度を導入後のヒアリング調査を行うなど、制度を従業員が快く活用できる為の努力をされており、組織の体制が出来ていました。
この体制は、従業員が自社を想い、自社で働き続けたいと望んだからこそ、出来上がったのだと思いますし、現場の人間がどれほど動くか、どれほど声を上げるかで制度も風土も大きく変化するのだと感じました。
そして企業も、従業員の想いを聞き、制度の様々な問題に対して真剣に向き合うことが重要で、従業員が長く安心して働ける環境作りを積極的に行うことで本質的に制度を活用できる風土が出来ると感じました。
(2010年6月23日現在)

0 件のコメント:

コメントを投稿