2010年7月20日火曜日

コミュニケーションスキルを上げていくのは永遠のテーマ



コミュニケーションスキルを上げていくのは永遠のテーマ

たとえば職場の誰かが育児にまつわる制度等を利用する際、「お先に失礼致します」とか「ありがとうございます」等、感謝の気持ちをその都度、きちんと言葉にして周囲の皆さんに伝えることはすごく大切です。
なぜなら、どれほど強く心の中で思っていたとしても、それだけでは相手に伝わらないからです。

同様にそれを見守る側も「頑張ってね、気をつけて帰ってね」と労りの気持ちを言葉にして伝えるだけで両者の関係性は、おそらくとても心地良いものになってゆきます。
こうして考えてみると、気持ちの持ち方と共にその伝え方が一番、重要ではないでしょうか。

だからこそ、それは何よりも難しい。人間にとってコミュニケーションスキルを上げていくということは、おそらく永遠のテーマかも知れませんね。

そしてそれは職場の問題に限らず、家族や親しい仲間においても重要な課題といえます。その意味では企業がより一層、効率性や生産性を求めるのであれば、人間関係を軸にした社内環境を整えることこそが最も重要なのではないでしょうか。

コミュニケーションスキルの改善を通して良好な対人関係を構築し、その結果として社内環境が整えられれば、組織の生産性が向上することは間違いないという実感を重ねた頃から、私自身は人材教育という仕事の重大さに気づき、その一翼を担う立場でありたいと思い始めました。

おかげさまで今でこそ、自分のしたいことがはっきりとわかっていますが、ずい分長い間、それがわからず、わからないが故にしたいことも明確ではありませんでした。はじめにお話したように、私自身、入社当初は“仕事は結婚までの間”と思っていましたし、人生の目標なんていうカッコよいものもありませんでした。

でも、或る日、何気なくテレビを見ていて、成功している人の多くが、理想からは程遠い現状でも夢をあきらめず、ずっと努力を重ねる現実に何か言葉には出来ない感動を覚えました。同時になぜ、報われないかもしれない努力を続けられるのだろうと疑問にも思いました。

そして、不意に夢を叶えている人たちにはどんなに苦しくても“諦める”という選択肢がなかったことに気づきました。それは実に単純明快な答えであり、多くの成功哲学のいうところの秘訣はあきらめないことに尽きる!を実感した瞬間でした。

そんなことを考え始めた頃から、もしかしたら人は皆“天職”を持っているのではないかと思うようになりました。好きで好きでしょうがない何か。朝から晩まで向き合える何か。そのことをしていたら時間を忘れる何か。日常生活の中に転がっていて、そんなに重要にも思えない当たり前の中にヒントがあり、発見があるのではないかと思います。

ほんの少し見方を変えて、自分自身の日常を観察してみることも大事かもしれません。決して一風変わった出来事が契機とは限りません。日々とどう向き合うかは、日々の暮らしの中に隠された意味をどう見つけていくかに繋がります。そのためには今よりもほんの少し、自分自身の感性や感度を上げることが大切です。

それがどうすれば出来るのか、そんなことを一人ひとりの可能性を見つけ出すヒントとして示唆することができれば、とても素晴らしいことだと思いますし、願わくば、それが私の天職と信じていたいと思います。






全体を通して


―― 私たちは社会人になるにあたって、女性が働きやすい環境とは一体どういったものか、に観点をおき、女性自身にも問題があるなんて考えたりもすることはありませんでした。
 しかし、この企画を通して、様々な意見を聞きいていくうちに、大きく間違っていたことに気づきました。本当に必要なことは自身にあると言うこと、周りにばかり原因を求めず、自分自身をも見つめなおす必要性を感じました。
確かに、働き始めは「結婚したら仕事を辞める」と言う考えがあるかもしれません。しかし、だからといって、目標を持って働いている人に対して負い目を感じる必要もありません。

はじめは仕事に対する目標もなく、やりたいことがはっきり決まっていなくても、自分の納得いくまで向き合ってみることで自分自身を見つめ直すことができ、ふとしたことがきっかけで仕事への価値観が変わっていくのだと思いました。
一歩踏み込んで、自分の胸に手を当てて考えることで、もう少し違った未来が見えるのだと思います。目標とする女性像をイメージすること、そうすることで働くことへの意欲が湧き、前向きな姿勢に変わっていくことができるのではないかと感じました。今回のこの取材を通し、自分の未来もまたさらに楽しみに感じました。
「仕事」と言うと、どうしてもいやなイメージが先行してしまいがちですが、「プライベートを輝かせるための仕事」と発想を180度変えてみることで視野が広がり、仕事自体にも厚みが出てくるのだと学びました。

人と同じ働き方をする必要はなく、自分がどう働きたいかを考えることが仕事とプライベートを充実させ輝く女性への近道になると思います。仕事も目の前の課題に対してどう向き合っていくか、その姿勢がキーポイントとなると思います。大きな問題点に対して全体を見ることは大切ですが、最も重要なことは、一つ一つ噛み砕いて紐解いていくことだと感じました。

私たちは、多種多様な働き方が可能となる社会の実現に向けて、企業における課題を見つけ出し、多くの解決に繋がる情報を発信していきたいと思います。

(2010年6月16日現在)

2010年7月10日土曜日

仕事は何のため?自身の価値観に向き合うことが重要



仕事は何のため?自身の価値観に向き合うことが重要

今でこそ「ワークライフバランス」と言う言葉が当たり前になっていますが、ほんの少し前までは仕事を続けるのであれば仕事。家庭に入るなら家庭と。選択肢は物凄く限られていました。しかもその選択は女性限定の課題。やがて、時代は結婚しても働くのは当然と進化し、今度は出産、子育てのハードル、さらに介護問題へと悩みの種は尽きません。
でもそんな中で、幸いずっと仕事を続けてこれて、おかげさまで自分自身の揺ぎ無い価値観を養えたことが1番大切なことだったように思います。

私の場合は「プライベートの人生の輝き!」であって、仕事は自分の人生を活き活きと輝かせてくれる要素であり、同様に家の仕事も自分の砥石。趣味のゴルフやマラソンも研磨剤。様々な宴会の幹事や世話役も好きだから続く。

決して仕事の為にだけ生きている訳ではないという自身の価値観の獲得と確立こそが仕事を通じての大きな財産だと感謝しています。その背景として挙げられるのは人事部時代の体験でしょうか。

当時は自分よりも年齢やキャリア、役職が上の方を対象にした研修
企画やその運営にも多く携わりましたが、ショックだったのは仕事一筋に人生を送ってこられた先輩が「会社に人生を捧げたのに」とか、「自分の青春を返して!」みたいな発言をされることでした。気持ちはわからなくもありません。

でも、それは違うのではないかと、30代半ばの私は強烈に考えさせられました。人生に満足していないことを会社や仕事や、誰かのせいにするのは絶対におかしい。私は仕事を続けたことをいつか後悔したくないし、ましてや他力本願モードの不満など口にしたくないと強く思いました。
やがて、それは折角の人生を楽しまないともったいないという考え方につながり、「仕事」は人生を輝かせる為のものであって、自分を追い詰める為の物ではないと思い至りました。





制度は骨組み。そこにしなやかな筋肉を育むのは現場の力

組織に存在する様々な「制度」は、国の政策と同じで、大局を見据えた中で作り出されるが故に案外、現場のニーズとは乖離しているものです。
だって、当事者ではない人がこの様な制度があれば良いのではないかと智恵を絞ったものですから仕方有りませんよね。もちろん、制度がなければ職場環境の変化、革新は実現しなかったと思いますが、本当の変化は日々、実際に動いている中で、ひとりひとりの気持ちや行動を通して、それが職場の習慣や風土として、積み上げられてゆくのではないでしょうか。

その意味では自分の記憶として「この制度があってよかった」とつくづく思うことはなく、元人事部の一員としては残念に思う一方で、そこに社会の根本的な課題の香りを感じざるを得ません。
実際、育児にまつわる制度を利用して、早く帰るとなると少なからず周りの負担が増えるのは否めません。
けれど、そのために利用する側が肩身の狭い思いをするのは理不尽ですし、かといって、当然の権利であると主張が勝ちすぎれば、周囲の不満は増幅され人間関係に深刻な陰りをもたらします。

制度を利用することでそんなマイナスが生じない様な、調度良いバランスを見つけ出すためには、何千件、何万件という現場での実績が必要なのだと思います。

最近、様々なメディアでも紹介されていますが、日本理化学工業(株)は [50年以上に亘り、チョークを製造している中小企業で、全体の70%以上が知的障害のある社員とのこと]ここでは、身体障害者がきちんと役割を持ち、立派に企業の一員として貢献しておられます。

そこには法定基準の何%雇用を遵守するためという目標はありません。まさに課題に向き合う思いや姿勢が行動を左右するという現実に驚かされます。

そして社会における【本音と建前】は違う!という奇怪さが遂に本当に変わり始めた気配を感じさせます。【言うは易し、行うは難し】自分に出来ることを貫く決意に、心強い事実です。




取材からの学び 



――  私たちは、バリバリと働き続ける女性像に憧れ、社会人になりました。けれども、就職活動中の女性営業職の枠は、ほんの一握りであることが疑問でなりませんでしたし、女性の能力が発揮できる場所がないのは企業側の理解がないからだとも思っていました。
今回お話を聞いて、問題は企業側だけにあるのではなく女性側にも問題があるのだと気づきました。
また、女性側の仕事に対する考え方を変えるには、仕事はプライベートを輝かせる為のツールとして捉えることが大切だとも感じました。
仕事へのやりがいを感じることができれば、プライベートが充実していないことを会社や仕事のせいにしてしまうという考え自体がなくなると思います。
制度面では、制度がたくさん確立されているのになぜ活用されていないのか、利用者側も権利があるのに主張をしないのはなぜか、と疑問でした。
しかし、今回の取材を通し、まずは、人間関係が形成されていなければ、実際に制度を利用することは難しく、利用したところで、周りからも好意的に受け止められないということがわかりました。
制度に関して企業は、建前で取り入れているのがほとんどで、本質的には何も課題解決になっていないのだと思います。
お話にあったように、障がい者雇用については、大企業を中心に障がい者の雇用は年々増加しているものの、1.8%の障がい者雇用率を達成している企業は4割程度と厳しい状況であるのが事実です。
これも制度だから、法律だからと導入するのではなく、お話にあった日本理化学工業のように、個々の存在を認めそれぞれの能力を活かせる環境をつくり、互いの関係性を築ける組織作りを行うことが最重要だと感じました。
私たち自身もこのような環境づくりや組織づくりを行っていくために、会社側に期待するだけでなく、一人ひとりが課題に向き合っていく姿勢を作っていくことが必要だと感じました。



(2010年6月16日現在)

2010年7月1日木曜日

人生初のターニングポイントは理不尽さへの素朴な疑問

―― 今月、ゲストにお招きしたのは水谷 伊久子様です。
京都を代表する下着メーカー、ワコールに20歳で入社され、その後、販売部から宣伝部、営業部への異動を経て人事部へ。その人事部では、10年に亘り、新入社員研修や全国の販売員育成のための研修企画開発から実施運営の全てを担当されました。女性が多い企業ならではの課題はまさにご自身の課題とも重なり、様々な制度改革に携わりながら、人が育つ意味やその価値の重要性に向き合う経験を重ねられました。
やがて社内での研修だけではなく、商工会議所等社外でのセミナーにもその活動範囲は拡大され、2006年に31年間に亘るワコール人生を卒業後、独立。
現在は「人材育成コンサルタント」として各種団体、企業の要請に応じて【輝く人材】の育成に挑戦される日々です。

水谷 伊久子氏

人生初のターニングポイントは理不尽さへの素朴な疑問


入社した頃は正直言って、そんなに意欲的でもなく、ずっと働きたいとも思っていませんでした。
仕事は結婚までのつなぎ行事みたいなもの。
それが当たり前の感覚でしたから、3年も勤めている女性の先輩は驚きの対象でしかありませんでした。よって、仕事はそっちのけで婚活に勤しむ毎日。

絵に描いた様な問題社員として、遂に社内結婚を果たしたのが24歳の時でした。
本来なら、ここでめでたく結婚退社で、会社も万々歳のはずでした。

ところが当時、社内結婚は認められていたもののやがてどちらかが転勤になり、その結果、女性が仕事を辞めざるを得ないというのが暗黙の了解事項としてまかり通っていました。

これがどうにも気に入りませんでした。仕事に対して不真面目極まりない自分の事は棚に上げて、その理不尽さに対してなぜ、誰も暴れないのか?という疑問や『なんでそうなるの?』という素朴な疑問がおさえられず、その結果、そんなことでは辞めたくない!という気持ちが生まれました。

今にして思えば、手前勝手も甚だしく、盗人猛々しいとでも言いたくなるような行状なのですが、その素朴な疑問こそが今日に繋がる仕事人生の出発点だったのかも知れません。

大袈裟に言えば、組織や体制、あるいは時代の常識みたいなものに負けたくないという気持ちでしょうか。よく言えば、反骨精神ですが、実際は【そんなのはイヤ!】という強烈な拒絶反応が火種となって、どうすれば仕事を続けられるか、辞めさせられずにすむかを日々考えるようになり、おかげでちょっとは真面目に仕事に向き合う日々がそこからやっと始まりました。

当たり前のことですが、立場が変わり、姿勢が変わり、見方が変われば、そこに存在する世界も見事に変わります。つくづく人生、何が契機になるかわかりませんね。

その後も沢山の転換点はありましたが、何であれ、納得ゆくまでやってみることが鍵かも知れませんね。特に気持ちが納得しないことにちゃんと向き合う姿勢は自分自身を知る手段としても必要かつ有効なことだと確信しています。


取材からの学び 


―― 今回取材をさせて頂くまで、仕事をバリバリとこなす女性は、入社当初から強い意志があり「スタート」から違うのではないかと考えていました。
だから、ご活躍されている水谷さんが、「結婚をしたら仕事を辞めたい」と思っていらしたとは想像もできなかったし、本当に驚きました。
もしかすると、「結婚して仕事をやめる」という気持ちは今も、多くの女性の中に根強くあり、自分の中にもあるのかもしれません。
同様に男性から見た女性観の中でも、それは変わっておらず、だから男性はなんとなく女性は長続きしないという見方をするのかもしれません。
女性自身もすぐにやめることを前提として働くのではなく、何か一つでいいから目標を持つことが大切だと思います。その時々にどう考え、どう動くかによって、色々な事が変わりだすのだと気づきました。
壁にぶつかった時、後ろを向くのではなく、負けるものかと前向きに捉え、諦めないことが何より大切であり、「ピンチはチャンス」と捉えることができれば全てにおいて見方が変わるのではないかと思います。女性が仕事に対する意欲を持って取り組んでいくと、その姿を周りが目にすることで、性別云々ということよりも、個人の特性を尊重した働きやすい職場になっていくのではないかと感じました。
私たちは取材をするまで、女性の立場を対等にするには、男性の理解が必要だと思っていました。けれど本当に必要なのは、「男女平等だ!」と声高に叫ぶのではなく、男女の特性を認め、お互いが歩み寄る努力なのではないかと思います。
こうあるべきと、頭を凝り固めるのではなく、少し肩の力を抜いて物事を捉え、人のどんな想いにも向き合い耳を傾けてみる視野の広さも必要なのだと感じました。


(2010年6月16日現在)