2011年9月5日月曜日

「一保堂にいる時間はいい時間を過ごしてほしい。」

毎月恒例の取材企画もついにお蔭さまで12回を迎えることができました。
今回は、およそ160年前から、常にその時代のニーズに応えることを考えて変化し続けてこられました老舗お茶屋さんの「一保堂茶舗」様にお話をお伺いしてきました。
一保堂様では、「品質保持はもちろん、お客様に対しても最高のパフォーマンスを」のポリシーを持ち様々なことに取り組まれています。また社員様にも「会社にいる時間は、中身の濃いいい時間を」をモットーに社内風土づくりにも励まれています。
そんな一保堂様に、秘訣をお伺いしてきました。





■まず始めに御社をご紹介下さい。



そうですねー、一保堂”の屋号は、実は宮家の山階宮より「茶、一つを保つように」と賜ったものなんですよ。弊社の名前を聞いてすぐに何屋さんかわかりにくいとは思いますが、日本茶の専門店として全国で扱っています。

――――つを保つで“一保堂”ってすごく素敵ですね。これまで“一つを保つ”をモットーにされてきたと思いますが、譲れないものや大切にされてきた想いはありますか?

そうですね。譲れない物はお客さまに提供する価値ですよね。
お客様に提供する価値として、安心して召し上がっていただく品質を維持するのはもちろんですが、平安時代に伝わって、今も愛され続けている日本茶。そんな日本お茶の魅力を色んな角度から引き出し、一味もふた味も違う面を提供し続けたいと思っています。
―――一味もふた味も違う面ってすごく素敵ですね。確かにお茶って長く愛されていますよね。

そうなんです。お茶って老若男女問わず飲める飲み物だと思いますし、お茶が飲みたい!と思うのは日本人だからだと思います。一言に“お茶”っていうと「知っている」と言うかもしれませんが、急須を出して、「おいしいお茶を淹れて下さい」って言ったときにおいしいお茶なんて淹れられるかな…ってどこか構えてしまうでしょう?


―――そうですね…。お茶は知っていても“おいしいお茶の淹れ方”ってなるとハードルも上がって少し構えてしまいますね。今はペットボトルでもたくさん売られていますし、なかなかお茶を淹れる機会ってないかもしれませんね。

そうなんですよね。でも急須で淹れるのは難しいことではないんですよ。だからこそ、こんなに簡単に飲むことができるのだと知って頂きたいですし、たまにはおいしいお茶を頂いてほっこりする時間をとって欲しいですね。やはり急須で淹れるお茶は淹れ方によって味も変化しますし深みもあり、とても豊かな味わいなんですよ。ペットボトルとは違うおいしさがありますからね。

―――確かにそうですね!なんだか暖かくて、すごく素敵ですね!

■これまで「古き良き」を大切にされながらも、時代の変化に合わせて変革されてきた点もあるとは思いますが今後の目標はありますか?


そうですね、お茶のイメージを変えていきたいと思っています。飲食店に行ってもお茶はただで飲める感覚があり、お金を出してまで買わないって人も多いと思いますし、まだまだ、お茶は年寄りの嗜好(しこう)品といった感じであまりおしゃれなイメージないですよね?他には「一保堂は、茶道で使うような高いお茶しか置いてないんでしょ」と、どこか敷居が高く感じられがちなんですよね。
でもそんなことはなくて、手軽に楽しんで頂けるってことをもっとたくさんの方に知って頂きたいですね。ここ最近、京都ブームで少しお茶自体もメジャーになってきていますし、しっかりと味わい、満足できるお茶を広げていきたいですし、私自身も、もっと勉強していきたいです。

―――素敵ですね。もっと勉強していきたいってすごくモチベーション高いんですね!

■社内全体がその様な空気なんですか?


ありがとうございます。日頃社長が社員に「一保堂にいる時間はいい時間を過ごしてほしい。」とこれだけは口にしています。どちらかと言うと弊社の社長は口うるさいほうではないですが、これだけは何度も言います。せっかくのご縁で一保堂の仲間として働くわけですから、ただ何となく働くのはもったいないんじゃないかって。やりたいこと、自分で成長に繋がることを見つけ、濃密な時間を過ごそうよっていつも言っています。

―――確かにそうですよね。会社で過ごす時間って、一日の半分以上を占めるのにもったいないですよね。
御社の社長様は皆さんを信頼されているから、どしっと構えられているんですね。

確かにそうかもしれません。社長は、自分で考え工夫するからこそ、楽しくていい時間を過ごせるんじゃないかって考えるタイプなんですよね。俺の言うことさえ聞いていればいい!なんてトップのいる会社で働きたいとは思わないだろう、と社員皆を信頼し、任せてくれるんです。何か面白いアイディアがあれば誰でも、社長に提案できますし、社長と一緒に考えて決めていくんですよ。
―――一緒に考え決めていく…すごく素敵ですね。現場の声を尊重し、本当に信頼されているんですね!

■社長さんはどんなお人柄ですか?


そうですね。すごくありがたいです。老舗の社長のイメージは、着物を着てお茶のことを話し始めたら止まらないイメージだと思いますが、おおらかで人の話をよく聴き、的確なことをパシッと話す感じです。なんだか見透かされている様な感じで鋭いですね。でも裏表もなく、すごく誠実な人間なので信頼しています。
だから、社員一同、自分の中で自問自答もあるとは思いますが、自然と自分ができる範囲はいつも向上しようと考えて動きますし、私の周囲では誰かに甘える・依存する感覚がなく、自分自身が一社長になったような感覚や視点で判断し、実行している様にも思います。

―――自分自身が社長になったような感覚ってすごいですね!

■初めは戸惑いや難しさを感じませんでしたか?

やはり私もはじめは、「いい時間を過ごせ」と言われても、“いい時間”を理解するのはなかなか難しかったです。でも、きっと日々の仕事の中で、手慣れてしまい流れ作業化してしまったり、慢心していることも多々あります。これって“いい時間”って言えるのかなってふと感じたんです。“いい時間”をすごすには、自分に厳しくなる必要もあると思うんです。マネジメントをし、生産性を上げ、濃密な時間を過ごすことも大切なのかなと。今日よりも明日、という様に少しずつ積み上げて、いい時間にしていきたいって感じました。言葉自体軽く捉えがちかもしれませんが、本当に色んな意味を含んだ、深い言葉だなと思います。
―――そうすることで仕事の質も変わると思いますし、すごく良いですね。“いい時間”という言葉がこんなに深くて色んな意味を含めているとは思いませんでした。

それが成長するきっかけになったんですね。入社当初と比べて変化してきた点はありますか?
そうですね~。私自身100%常に意識できているかと言えばまだまだな点は多々あります。毎年、新入社員の前でこの話をするたびに自分自身も警められ、意識してるんです。(笑)
私は事務で採用されていましたが、入社当初は応援で販売にでることもあり、半分くらいは販売もしてました。販売なんて夢にも思っていませんでしたし、正直どちらかと言えば避けたかった分野でした。(笑)

現在はそういったことは行なっていないのですが、販売はチームワークもコミュニケーション能力も必要で社会人基礎力の全てのベースという感覚はありました。当初は、接客、レジ打ち、包装…何でもできて初めて一人前で、お客様とも顔を合わせますし、マナーも学べ、自社のこともよく知れるし、外で勉強するよりも本当に良い経験でした。販売は、自分には向いていないと思っていたんですが、やってみると意外と楽しかったです。なんでもやってみるもんですね。おかげで仕事の精度は上がったかもしれません。


■販売は避けたかったと仰っていましたが、そのジレンマをどのように乗り越えたんですか?


ジレンマをどのように乗り越えたか…。その頃はすごく嫌でも、後々振り返ると、嫌なことや、苦手なことでも本当にできないことは滅多にないし、やってみたら案外できることがほとんどだと思いました。“成長”とは、苦手なことをいかになくしていくかだと思うんです。自分ができなかったことができるようになった時に初めて感じるのかなって。人にはモチベーションの波があると思います。底辺の時は、いくら気持ちを切り替えようと思っても、なかなか持ち上がらないけれど、何がきっかけで変わるか分からないですし、とりあえず素直にやってみることも必要かと思います。
―――確かに成長したなと感じるのは苦手を克服した時かもしれませんね。

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