2011年3月15日火曜日

「堀場製作所は西部劇と一緒だ」

―― 今回の取材先は、日本で初めてpHメータの国産化を実現したパイオニアの株式会社堀場製作所様です。社是は〝おもしろ おかしく″という、「一人ひとりが人生の大半を占める仕事を最大限に楽しもうとする」精神で有名です。

そして日本を代表する国際的大手メーカであり自動車や半導体産業をはじめ多彩な製品を世界各国に送り出しされ未来の豊かな社会づくりに貢献されています。
それだけではなく働きがいのある企業風土のもとユニークな社員に対する研修やイベントをされています。そこで、株式会社堀場製作所 管理本部 人事担当副本部長 野崎 治子様に企業風土についてのお話をお伺いしてきました。
野崎 治子氏
―― 御社は社是の「おもしろおかしく」をモットーに、社員の自主性を伸ばす取り組みをされていらっしゃいますよね。

■社内風土として定着し社員全体が自主的に行動していくのはなかなか難しいと思うのですが、野崎様がご入社された当初からずっと現在の様な社内風土ですか?


入社当時に、先輩から「堀場製作所は西部劇と一緒だ」と教えてもらいました。カウボーイは西へ西へと進み、自分の気に入った牧草地を見つけたら杭を打って有刺鉄線をはり、自分の牧場にする‥、「やります」と言えば何でもさせてもらえる会社だと言われました。
もともと学生ベンチャーからスタートした会社ですから、“チャレンジ”や“思い”を大切にしていると感じることはよくありますね。

例えば、わが社には公募制の海外研修制度があります。海外関係の業務を担当している社員だけではなく生産部門や管理部門など、誰でも受験のチャンスがあります。指名を待つのではなく自ら「行きたい!!」と手を挙げた人から研修生を選べば、チャンスを活かそうと自分で勉強してくれますし、少しでも多くのものを得て帰ってこようとしますよね。 


会社ですから、チャンスをものにできるかどうか本人次第です。一定レベルの語学力は必要ですし、「現地で仕事をすることで、こんな貢献ができる。」「帰国してからこんな貢献ができる。」という思いがあるか、社長や役員との面談で伝えてもらっています。

海外研修制度も10年前から枠を3名から10名に広げてもらいました。お金はかかりますが、海外子会社で1年間仕事をすることで本社の動きを客観的に見ることができます。得てして現場を見ないまま机上で物事を考えてしまいがちですが、外へ出ることで良い点や至らない点を理解して新たな行動が始まれば、とても意味のある経験になりますよね。

毎年20人前後が応募しますので、半分は不合格です。他社の方から「面接で落ちた人はモチベーションが下がるんじゃないか」と聞かれますが、当社では一度や二度、落ちて当たり前なんです。「去年と比べて何が成長した?」「それはですねぇ…!」なんてお互いにニコニコしながら話していますし、合格しなかった人には社長から「あなたのチャレンジを評価します。ぜひ再チャレンジしてください。」とのメッセージが届けられています。

―― すごく素敵ですね。不合格だった場合は落ち込んでしまいますが、フォローがあると全く違いますね。去年のチャレンジを覚えて頂いてることも嬉しいですし、挑戦してよかった!と思いますね。御社は「個人」をしっかり見ているなぁとすごく感じます。
他にも御社は誕生日会など社員を大切にされている取り組みもありますね。不況時は経費削減が見られますがすごく社員を大切にされていますね。

誕生会は “社員と経営トップとの社内コミュニケーションの場”ですから、他の経費を削っているときでも続けてきました。経営トップにとっては、直接自分の思いを伝える場ですし、「活力があるな‥」「うまくいっていないことがあるのだろうか‥」等、プラスαともいうべき社員の士気や思いを肌で感じる場になっているようです。

社員同士も、仕事以外の付き合い、いわばのりしろ部分のコミュニケーションがないと、良い商品は生まれません。数年前にあるビジネス誌に「日本一宴会が多い会社」と紹介されました。

当社では「目標設定」をコミュニケーションツールとして運用しています。「何を期待しているのか」「何をやりたいか」「何ができるか」のすり合わせを行なうわけですが、会社や組織の方向性がわかっていないとうまく働けません。

部やチーム単位でミーティングを行なうことで、誰が何をどのようにするのかを明確にして、仕事が抜け落ちたり、一人が仕事を抱え過ぎることを防ぎたいと思っています。全社でミーティングはできませんので、個人目標をイントラ上に公開しています。
他部署や他者の動きが見えますから、準備をしたり手伝ったり、お互い見せ合うことでできることの幅も広がりますよね。

元々は、経営計画をブレイクダウンするために導入しましたが、「自分のしていることが経営にどうつながっているか、会社に貢献できているのが分かるから嬉しい」との声を聞いたとき、そういう観点もあったのだと勉強になりました。

―― モチベーションを上げる仕組みが細かくあり、すごく働きやすい環境ですね。やらされ感ではなく、自分がいかに会社に貢献できるかという気持ちが生まれるのが素敵ですね。

ありがとうございます。人事の制度や仕組みは、クライアントつまり社員の声を聞きながら良いものに作りかえていきたいと思っています。社員のやる気をそぐようであればやめればいいし、フォーマットを変えた方が使いやすいと声が上がれば改善する。

全員に聞くのが難しい場合は、管理職や組合などの中から何人かにヒアリングを重ねます。違う立場の方から同じ意見を聞くと、それが適切なんだろうと分かりますし。
制度にしても何にしても完璧を求めても100人が100人納得とは限らないですよね。7割ぐらいの人から喜んでもらえたら嬉しいですし、選択肢の中から自分で選んでもらうこと、何かの仕組みや運用でカバーできたらいいなと思います。

―― 御社のように大企業であれば隅々まで声が聞こえないと思っていたのですが、隅々まで声が聞こえるんですね。声を聞き、実行するスピードがすごく早く、風通しの良い会社だと感じますね。

(2011年2月4日現在)

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