2010年9月10日金曜日

育児取得の問題と風土について



■性別役割分業の世代に育った方(女性は家庭、男は仕事という考えを持った方)には、男性の育児休業取得は、理解されにくいのではないですか?

世代間で時代の背景や価値観の違いはあって、一気に理解が進むとは思いませんが、例えば、参観日や運動会等の学校の行事に父親が参加することは、ほぼ当たり前になりつつあり、自分の親の世代ではあまり考えられなかったことです。

少しずつですが、風潮は変わってきていると思います。父親の子育て参加がごく普通のことと思える世代が管理職を担う年代になってきており、職場における理解はさらに進んでいくのではないかと思います。

■男性の育児休業取得は、さらに所得面での問題もありなかなか難しいと思いますが、取得率向上に向けて何か取り組みをされていますか?

 当社の事例としては、2006年に人事部の者が1名取得しただけで、まだ取得率は低く、男性の育児休業取得はこれからの課題だと考えています。

共働きが当たり前の現在においても、依然として男性が家計を支えている場合が一般的です。当社の現行制度では、育児休業取得中は給与が出ません。育児休業給付金は支給されるものの給与の半分程度で、収入ダウンは避けられません。

そのため、育児目的の休みであっても、自分の持っている有給休暇を利用するので、育児休業取得自体はなかなか進まないのが現実です。
今後は、男性の育児休業取得促進を視野に入れ、まずは一週間など、ある程度の期間は有給化しようかと検討をはじめているところです。
―― 有給化はすごくいいですね。そうなると男性も取りやすくなりますし、取得率をあげるには工夫も必要ですね。

そうですね。まずは、男性の育児休業取得率10%を目標としていますが、本音では子供が生まれた方の半分ぐらいは取得していただきたいと思っています。産後も奥さんは大変だと思いますし、男性が育児休業を取得することで育児がどれほど大変かの理解も深まると思います。

―― なるほど。

■男性が育児取得を取ると「出世コースから外れるよ」と言う企業も少なからずあると聞きますが、ワコール様ではどうですか?

そもそも「出世コース」というものがないですが、育児休業の取得が評価等に影響するかという意味においても、当社ではないですね。
夏休みに一週間休むのと同じで、育児休業も短期であれば、前もって計画的に業務を行うことで十分対応できると思います。休んでいる間の周囲の負担についても、普段から自分がいなくても他の人が判断できるように情報共有を行っておく、整理整頓を心がけ資料を探しやすくしておくといったようなことで軽減できると思います。
これは「休むため」だけではなく、業務のマネジメントという観点でも、是非実践すべきでしょうね。
まずは少しずつでも取得し、育児の大変さを経験してみることは大事だと思います。当社の事業領域には、マタニティーやベビー、キッズといった商品群も含まれますので、仕事以外で経験をすることがビジネスにも活きるかもしれないですよね。
―― 弊社では、制度は整いつつありますが育児休暇の活用事例がなく、まだまだです。 

■利用するための運用など対策はされていますか?

上司をはじめとした周囲の理解、制度を利用しやすい風土、雰囲気づくりが何より大切だと思いますが、運用上の工夫によって取りやすくすることもできると思います。
例えば、育児休業期間中の人員補充を行う際、人材派遣を活用することは一般的だと思いますが、現場では「人材派遣の方に重要な仕事は任せられないので、結局残されたメンバーにしわ寄せが来る」といった不満の声が聞かれ、育児休業を取得しにくい雰囲気を醸成してしまうことがあります。
この問題に対する工夫として、人材派遣の方に休業者の仕事をそのまま担当してもらうのではなく、チーム内の業務分担そのものを変えてしまう方法が考えられます。
例えば、チーム内の業務のうち、比較的軽い仕事・軽いけど手間がかかる事務作業など集約して、派遣の方に担当していただき、休業者の仕事のうち重要な部分は他のメンバーで吸収するといった方法です。

また、経営者や上位者が、育児関連制度を単なる「子育て支援策」ではなく、「優秀な人材が継続的に会社に貢献し続けてもらうための支援策」ととらえることができれば、言い換えると、せっかく育ててきた社員が、育児を理由に辞めていってしまうのは会社にとって大きな損失だと考えれば、自ずと両立支援への取り組みが促進されるのではないかと思います。

(2010年7月14日現在)

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