2010年9月1日水曜日

制度利用の視点

―― 皆さん、こんにちは。今回で取材企画第3弾となります。さてお待ちかね、ここで質問です。
1952(昭和27)年の秋、大阪の百貨店で国内史上初の「下着ショウ」を行なった下着メーカーをご存知でしょうか?
そうです、皆様ご存知1949年より、常に時代の最先端を行き、下着の流行を発信し続け、品質やデザインのすばらしさだけでなく、人間工学の視点から機能性も追求されています老舗下着メーカー「ワコール」様です!!今や京都をいや世界を代表する大手下着メーカーです。
創業以来、「女性と共にある」ことに存在価値を置き、2001年1月には「女性共感企業」を宣言されました。ピンクリボン活動などさまざまな取り組みを率先して行なわれている企業様で従業員の約8割が女性であるワコール様ならではのお話をお聞きしてきました。

■仕事と家庭の支援制度の例として短時間勤務制度など、お勧めや他にはない制度、取り組みなどはありますか?

株式会社ワコール
人事部 人事企画課 
人事企画担当 課長 
深沢 信介氏

出産、育児などに関する制度はごく一般的な内容ですが、制度の充実よりも、まずは制度を利用しやすい環境の整備を心がけてきました。

例えば管理職研修で理解促進を図ったり、職場復帰時の部門長との面談を行い、復帰に際しての不安を軽減したり・・・・。

現在では、制度を利用しやすい土壌は随分根付いてきたと思います。また休業中の不安軽減という意味では、毎月社内報等の配布物、連絡事項を送る際、総務の担当者がコメントを添えることで、「会社との繋がり」を感じてもらえるようにしています。

他に、女性社員の有志が自主的に作っている “WACWAC母の会”というお子さんを持つ社員のコミュニティもあります。ニーズが合致した方々が集まり、幅広い年代層の方々との有益な意見交換が出来る場となっています。

また、制度化できていないことについて、取り組みや運用でカバーしているケースもあります。

例えば、転勤のある総合職について、遠距離結婚や配偶者の転勤によって別居婚を余儀なくされているような場合、可能な範囲で配置替えを行うこともあります。制度として、一定期間の転勤免除等の配慮を行うかどうかは今後検討しようと思います。



―― フォローも行き届いているのですね!確かに制度利用後、社内の空気的に戻る場所がないのではないかなどの不安もなくなり、休業中、会社との繋がりがあると安心しますね。弊社は女性が少ないので、ワコール様のように女性が多く、制度が整いフォローの行き届いている企業にすごく憧れます。

実はそうでもないんですよ。当社は女性が大半を占めているからこそ、制度拡充の影響が非常に大きく、冒頭にも少し触れたとおり、制度内容そのものはそれほど充実しているわけではないんです。

例えば、育児短時間勤務を小学校入学後にも拡充されている企業もある中、当社では3歳までしか取得できません。
拡充のニーズは高いと思いますが、女性社員の大半を占める販売職が店舗勤務のため、シフト制の勤務形態になっており、一番忙しい夕方以降に勤務できない人が増えることは、現場としては非常に困るんです。

販売員が多い店舗では、シフトのやりくりで吸収することが比較的容易ですが、人数が少ないと、周りの方への負担が多くなり、かえって不満や軋轢に繋がってしまうことがあります。

それを解消するために人員補充を行えば、生産性の低下につながってしまう恐れがある。そういう事情があって拡充できていないんです。

仕事と育児の両立には可能な限り支援したいと考えていますが、制度の充実によってかえってマイナスの影響が出ることは避けたいし、そういった意味では慎重にならざるを得ません。
制度化が難しい部分については、できるだけ限り「運用」や「配慮」で対応しようとは心がけています。「運用」は裁量の度合いが大きく、融通が利きますが、明確なルールがない分、従業員にとっての保障は弱くなります。

逆に制度化した場合、できることはそれ以上でもそれ以下でもなくなるので、場合によっては本人のニーズに合わないことが出てくる。双方のちょうど良いバランスが大切だと感じています。
両立支援に対する制度の充実を可能にするためには、当社の社是でもある「相互信頼」、つまりお互いを尊重する心が欠かせないと思っています。

制度を利用する人は、権利主張ばかりするのではなく、周囲の協力があってこそ制度が利用できているのだと自覚し、感謝すること。働く時間が短く、子供の病気などで急に休んだりすることもあるわけで、周囲に負担をかけているのは事実です。

その分、時間内は他の人以上に懸命に働く。そうすれば周りも理解を示してくれるし、「育児で大変なんだから、少しでも助けてあげよう」という気持ちも芽生えるんじゃないでしょうか? 

一方周囲の人は、制度利用者がいることで負担を感じることがあるかもしれませんが、今後出産や育児、また介護等も含めれば、自分が逆の立場で、周囲のお世話になることもあるかもしれない。そう考えれば、「お互い様」だと思えるのではないでしょうか。

もちろん、「気持ち」だけで解決できる問題ではないですが、制度の内容や運用と同じぐらい、あるいはそれ以上に大切なことだと思います。











(2010年7月14日現在)

0 件のコメント:

コメントを投稿