2010年7月1日木曜日

人生初のターニングポイントは理不尽さへの素朴な疑問

―― 今月、ゲストにお招きしたのは水谷 伊久子様です。
京都を代表する下着メーカー、ワコールに20歳で入社され、その後、販売部から宣伝部、営業部への異動を経て人事部へ。その人事部では、10年に亘り、新入社員研修や全国の販売員育成のための研修企画開発から実施運営の全てを担当されました。女性が多い企業ならではの課題はまさにご自身の課題とも重なり、様々な制度改革に携わりながら、人が育つ意味やその価値の重要性に向き合う経験を重ねられました。
やがて社内での研修だけではなく、商工会議所等社外でのセミナーにもその活動範囲は拡大され、2006年に31年間に亘るワコール人生を卒業後、独立。
現在は「人材育成コンサルタント」として各種団体、企業の要請に応じて【輝く人材】の育成に挑戦される日々です。

水谷 伊久子氏

人生初のターニングポイントは理不尽さへの素朴な疑問


入社した頃は正直言って、そんなに意欲的でもなく、ずっと働きたいとも思っていませんでした。
仕事は結婚までのつなぎ行事みたいなもの。
それが当たり前の感覚でしたから、3年も勤めている女性の先輩は驚きの対象でしかありませんでした。よって、仕事はそっちのけで婚活に勤しむ毎日。

絵に描いた様な問題社員として、遂に社内結婚を果たしたのが24歳の時でした。
本来なら、ここでめでたく結婚退社で、会社も万々歳のはずでした。

ところが当時、社内結婚は認められていたもののやがてどちらかが転勤になり、その結果、女性が仕事を辞めざるを得ないというのが暗黙の了解事項としてまかり通っていました。

これがどうにも気に入りませんでした。仕事に対して不真面目極まりない自分の事は棚に上げて、その理不尽さに対してなぜ、誰も暴れないのか?という疑問や『なんでそうなるの?』という素朴な疑問がおさえられず、その結果、そんなことでは辞めたくない!という気持ちが生まれました。

今にして思えば、手前勝手も甚だしく、盗人猛々しいとでも言いたくなるような行状なのですが、その素朴な疑問こそが今日に繋がる仕事人生の出発点だったのかも知れません。

大袈裟に言えば、組織や体制、あるいは時代の常識みたいなものに負けたくないという気持ちでしょうか。よく言えば、反骨精神ですが、実際は【そんなのはイヤ!】という強烈な拒絶反応が火種となって、どうすれば仕事を続けられるか、辞めさせられずにすむかを日々考えるようになり、おかげでちょっとは真面目に仕事に向き合う日々がそこからやっと始まりました。

当たり前のことですが、立場が変わり、姿勢が変わり、見方が変われば、そこに存在する世界も見事に変わります。つくづく人生、何が契機になるかわかりませんね。

その後も沢山の転換点はありましたが、何であれ、納得ゆくまでやってみることが鍵かも知れませんね。特に気持ちが納得しないことにちゃんと向き合う姿勢は自分自身を知る手段としても必要かつ有効なことだと確信しています。


取材からの学び 


―― 今回取材をさせて頂くまで、仕事をバリバリとこなす女性は、入社当初から強い意志があり「スタート」から違うのではないかと考えていました。
だから、ご活躍されている水谷さんが、「結婚をしたら仕事を辞めたい」と思っていらしたとは想像もできなかったし、本当に驚きました。
もしかすると、「結婚して仕事をやめる」という気持ちは今も、多くの女性の中に根強くあり、自分の中にもあるのかもしれません。
同様に男性から見た女性観の中でも、それは変わっておらず、だから男性はなんとなく女性は長続きしないという見方をするのかもしれません。
女性自身もすぐにやめることを前提として働くのではなく、何か一つでいいから目標を持つことが大切だと思います。その時々にどう考え、どう動くかによって、色々な事が変わりだすのだと気づきました。
壁にぶつかった時、後ろを向くのではなく、負けるものかと前向きに捉え、諦めないことが何より大切であり、「ピンチはチャンス」と捉えることができれば全てにおいて見方が変わるのではないかと思います。女性が仕事に対する意欲を持って取り組んでいくと、その姿を周りが目にすることで、性別云々ということよりも、個人の特性を尊重した働きやすい職場になっていくのではないかと感じました。
私たちは取材をするまで、女性の立場を対等にするには、男性の理解が必要だと思っていました。けれど本当に必要なのは、「男女平等だ!」と声高に叫ぶのではなく、男女の特性を認め、お互いが歩み寄る努力なのではないかと思います。
こうあるべきと、頭を凝り固めるのではなく、少し肩の力を抜いて物事を捉え、人のどんな想いにも向き合い耳を傾けてみる視野の広さも必要なのだと感じました。


(2010年6月16日現在)  

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